思い出のスナップ 「信越線を見守る大樹と北越鉄道の遺構」

EF62 が 写るスナップ写真の地を訪れた際、農家のお爺さん
が、稲を干す「稲架」(ハサ)を組み上げている真っ最中で、
小生が列車を待っている間、作業をしながら 昔の話をしてく
ださったことを思い出しましたので、書き残そうと思います。

昔の日本海縦貫線の路線は、殆どの区間が単線・非電化の設
備で運転されていましたが、現在も東北地方に単線が残るも
のの、複線・電化 が 徐々に進展し、現在の姿になりました。

この場所は、信越線の複線電化延伸の過程で、単線区間とは
別に、新たに盛土されて作られた区間だ
そうで、小生がカメ
ラ構えていた場所が、単線非電化の旧線跡地とのことでした。

▼残暑の信越線を行く EF62 [篠]  のスナップ (1977年)
EF62 と 大樹
▲この地方で見られる 稲架 (ハサ) が 姿を見せ始めた季節 

スナップ写真に写る、線路の向こう側に見える赤い屋根が、
お爺さんのご自宅で、複線化に際して、ご自宅の庭の一部
を国鉄に買収されたそうです。
なんでも EF62 の 後ろに写る、お庭にある大樹と同じ時期
に植樹した仲間の木が、線路となった場所にも何本かあった
そうで、買収の際、樹木1本
1本にも値が付けられ、当時の
価格で1本100円で買収されたのだと伺いました。
(1960年代のお話ですがそれにしても安すぎませんか・・)

それ以外にも、買収される区画にあった納屋など、どんなに
古くて小さな物でも、ひとつひとつに値が付けられ、土地代
と共に、全ての物件について買収価格の明細が示され、さす
が「親方日の丸」の仕事ぶりだった、と回想されていました。

▼カメラを構えていた車の轍がある砂利道が旧線跡地の旨
信越線_旧線跡地_1
後から敷設された左手に写る複線は、画面奥の山の裾野あた
りで、旧線跡地と合流していました。
この跡地も元を正せば「北越鉄道」の手で開通した歴史ある
路盤だった訳で、国鉄の非電化時代は D51 や C57 が 走っ
ていたかと思うと感慨深いものがあります。


この旧線跡地の足元には、小さな用水路を跨ぐレンガ造りの
構造物が残っていると聞き、私有地の雑草をかき分けて案内
してくれましたので、ありがたく記録させていただきました。

▼旧線跡の足元で ひっそりと役割を全うする構造物に感激!
信越線_旧線跡地_2
▲お聞きした話では「北越鉄道」時代からの遺構の旨です
 草むらの中に「エ」マークの 国鉄の杭 も あるそうです

案内された場所は、お爺さん宅で生活用水として使っている
井戸もある私有地なので、無断で立ち入ることはできない所
ですが、雑草が生い茂っているので、当事者でないと、その
土地の区画や、用水路が通っていることも全くわかりません。
誤って足を踏み入れると、間違いなく用水路にドボン!です。


お話をして下さったお爺さんいわく「うちの庭のど真ん中に、
国鉄を通してやったのだ」という解釈をずっとされているそ
うで、実際、お庭の敷地を分断されることになった複線線路
盛土の ”のり面” は、お庭の景観の一部になったので 盛土部
分の草刈りも、お庭のお手入れついでに、ご自身でなさって
いるとの事で、丁度お手入が終わったという部分を、見せて
いただきました。

▼実に見事な仕上がりに整備された斜面が美しかったです
信越線_旧線跡地_3
▲用水路を境に 左手が国鉄、右手が お爺さん宅 の 敷地
 右手にあるお庭の大樹の陰が大きく写り込んでいました

この背後の"のり面"は、まだ草ボウボウでしたが、明朝の涼
しい時間帯に続きの手入れを行うとのことで、丁度その斜面
の下へ行ったところで、ディーゼル急行「しらゆき」がやっ
て来たので、慌ててシャッターを押しました・・。

▼どさくさ に 紛れて お庭から撮らせていただいた1枚
信越線_急行しらゆき
▲まさに ”お庭に国鉄線が通っている” といった印象でした
 キハの
バラバラと開けられた側窓に季節と時代を感じます

この後、また元の撮影場所に戻ろうとした際に「旧線跡地
を辿って行けば、途中で昔あった踏切跡に線路が露出して
いる所があるから」と、お土産情報までいただいたので、
せっかくなので、見に行くことにしました。

▼左右方向が昔からある街道で、止まれの文字がある道路が
 旧線跡地で、ここから画面奥は綺麗に舗装されていました
信越線_旧線跡地_4
▲情報どおり 街道を横切るレールが1本、顔を出していまし
 たが、さすがにこのレールは「国鉄時代」のものでしょう

地元の方の昔のお話を聞かなかったら、何も知らないまま列
車の写真だけ撮って終わっていたところですが、その地に暮
らす人との出会いや会話は、やはり大事なことですね。

こんなに素晴らしい数々のエピソードを、レイアウト造りの
「妄想」に 加えてみたくなりました。


思い出のスナップ 「信越線を見守る大樹と北越鉄道の遺構」
おわり